ネンチケのススメ!! 永島誠チケットセールスグループ部長 インタビュー(前編)

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hamatra paper vol.10611/10 名古屋グランパス戦で配布)に掲載した、特集「ネンチケのススメ 」。

本特集でインタビューさせていただいた、横浜マリノス・第一事業部チケットセールスグループ部長の永島誠さんとクラブに許可を頂き、インタビューの全文を hamatra.comで公開します。

(インタビュー:蒼井真理)


◆プロフィール

profile

永島誠(ながしままこと)

19661016日生まれ、鹿児島県出身。横浜国立大を卒業後、「ぴあ株式会社」に入社。チケット販売やイベント企画・プロモーションのノウハウを学ぶ。2004年、横浜マリノス株式会社に入社。現在は第一事業部チケットセールスグループ部長として、広告宣伝やチケット販売業務の責任者を務める。

 


F・マリノスの年間チケット販売数は少ない?

――まず、ネンチケ(年間チケット)について基礎的なところから。Q&A形式で永島さんにお答えいただく中で、クラブとファン・サポーターが情報や考え方を共有できればと思います。

 

はい。よろしくお願いします。

 

――Q1.F・マリノスの年間チケット販売数や入場者に占める年間チケットホルダーの割合は、浦和レッズや近隣の他クラブと比べて少ないのでしょうか?

少ないですね。近隣の川崎フロンターレが8,000席超、FC東京も約8,000席、浦和レッズが20,000席に近いと聞きます。

ただ同時に、前売り券や当日券を買って試合にきてくださる方の割合が多いのはF・マリノスの強みとも言えます。ネンチケ販売数は川崎やFC東京より少なくても、入場者数はF・マリノスの方が多い。固定のファン・サポーターの占める率があまりに高く、新たにスタジアムに来てくださるお客様が少なくなると、将来的には観客数が先細りになってしまうリスクもありますから。

クラブとしては、「三ツ沢の自由席はネンチケでなければ入れない」10,000席が適正販売数かなと考えています。平均入場者に占めるネンチケ率は、35%を当面の目標にしています。

F・マリノスの強みは、優勝争いに絡めていない中でもネンチケ販売数を伸ばしていることです。法人向けの販売数は厳しい景気動向もあって、2000年からずっと右肩下がりですが、個人向けのネンチケ販売数は確実に伸びており、席数では個人向けが全体の95%を占めています。

現在のネンチケ販売数は、タイトル獲得や人気選手の加入といった「特需」に頼らずに伸ばしてきた数字なので、これから大きく伸びることはあっても急激に落ち込むことはない。今後もクラブを支えるベースとなる数字であると、自信をもっています。


■「過去最多」を更新し続けているネンチケ販売数

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――資料を読んで、特に昨季・今季と2シーズン続けて、予想以上に良い数字の伸び方をしており、少し驚きました。

 

ゴール裏の応援も含めて、スタジアムの雰囲気も良くなっていますし、そこで観戦・応援の喜びを知った人が新たな人を連れてくる、良い循環も生まれていると思います。

 

これが毎年優勝争いして、タイトルを獲っているクラブだったら不思議でもなんでもないのですが(笑)。近年、順位的にはあまり芳しくない中でネンチケ販売が伸びているのは、誇れる部分かなと思っています。

今季から新設した「SC席」もネンチケで約200席ご購入いただいています。「より価格の高い指定席から流れてくるお客様がどれだけいるか?」という心配もありましたが、SB席も含め全ての指定席もネンチケ販売数は伸びています。我々が想定していた通り、やや年配の自由席ネンチケホルダーの方が「シート張りをしたり、待機列に並ばなくても、いつもの場所で観戦できる」と考えられて、SC席に移行されていますね。

 

――2011年は、前年末に松田選手ら多くの人気選手の契約非更新がありネンチケの販売数は減っていますが、この年はハーフネンチケの販売数が他のシーズンに比べても多いですね。

 

一度はF・マリノスから気持ちが離れてしまったけれど、「やっぱり試合を観に行きたい」と思ってくださった方も多かったのではないでしょうか。少しずつ、選手個人ではなくチームそのものを応援してくださるファン・サポーターが増えているように感じています。

 

――長引く不況に、2011年の開幕直後には東日本大震災もあり、近年はJリーグ全体で観客動員の苦戦が続いています。その中でも、F・マリノスのネンチケ販売数と観客動員は2シーズン連続で着実に伸びている。しかも昨季は、最後に4位になりましたが最終節までの最高順位は5位で、一度も優勝争いには絡めていません。…これは結構すごい事だと思うのですが。

 

昨シーズンは序盤につまずきましたが、樋口監督と選手たちが我慢して、ブレずにスタイル構築に取り組んだ結果、「内容的におもしろいサッカーになってきている」と感じられたファン・サポーターが多かったのではないでしょうか? 「おもしろいサッカーをして勝っていけば、お客様も増えるし、ネンチケを買いたいと思われる方も増える」のだなと強く感じています。

前所属クラブで主将を務めたこともある、富澤選手や中町選手などピッチの外でも発信力の強い選手が加入したのも大きいですね。対外的な告知、PR面で彼らの力を借りているところは正直かなりあります。富澤選手は、スタジアムDJの光邦さんのラジオ番組でほとんどレギュラーみたいになっていますし(笑)。


■ネンチケ10,000席を目指しての取り組み

――当面の目標である「ネンチケ10,000席」を達成するため、今後はどのような取り組みを考えていますか?

 

過去数シーズン、あらゆる方面で地道な取り組みを継続してきたからこその増加傾向だと思うので、これは続けていきます。その中でも、「小学生のネンチケ販売数」は伸びてはいるのですが、私たちが思っている程ではない。価格も1試合あたり200円と低く抑えているし、もっと増やしたいと考えています。

小学生のネンチケ販売数が伸びれば、必然的に親御さんも同伴するために前売り券・当日券を購入いただいたり、あるいは翌シーズン以降にネンチケの購入を検討してくださるかもしれない。そうやって「大人の自由席率」も伸ばす中で、最終的には「ニッパツ三ツ沢の自由席は、ネンチケ購入者にしか座れない」というレベルまで行ければいいなと考えています。

あとは、第三の指定席であるSC席が初年度から好調な販売数を記録しましたが、F・マリノスは他のクラブに比べても金額の高い指定席があまり売れていません。高額な指定席を買ってくださるファン・サポーターに対して、もっと付加価値を感じていただけるようなサービスを行いたいと考えています。

2014シーズンは、最高ランクSSS席のネンチケを購入いただいた方にのみお渡しする英国製ニットスカーフを製作しようと思っています。プレミアリーグには同様のサービスを行っているクラブも多いようです。やはり、「特別感・プレミアム」は必要かなと考えています。


前売り券や当日券を買ったほうがクラブは助かる?

――Q2.割引率の高いお得なネンチケより、前売り券や当日券を買って観戦した方がクラブは助かるんじゃないの? …と考えるファン・サポーターは未だに少なくないようですが。

 

収益だけを考えれば、20試合を全て当日券で観戦いただく方が助かります(笑)。でもクラブはチケット収入の増加だけを目的にしている訳ではありません。シーズン開幕前に年間のスケジュールが出た段階で、「F・マリノスの試合には全て行くものだ」という前提で、スケジュール帳に試合日程を書き込んでくださる熱心なファン・サポーターを増やしたいのです。

F・マリノスは他クラブと比べても当日券を買って来場いただくお客様の割合が高い。そうすると例えば、雨が降ったら入場者数が予想を大きく下回ってしまうこともあります。ネンチケを持っていると、多少の雨であったりチームが不調な時期でも、「試合に行かなきゃいけない」という気持ちにさせるのではないかと思います。

 

――ファンとしては当然、「先にお金を払っているのだから元を取りたい」という考えもありますね。

 

そういう効果はあると思います。ただ、ネンチケが100%になるとクラブのチケット収入も落ちてしまうので、35%ぐらいが適正な数値なのかなと考えています。


■ネンチケは年間計画のベースにもなる

――以前、永島さんにインタビューさせていただいた際も、「入場者に占めるネンチケ率が上がると年間のスケジュールが立てやすい」という話がありました。

 

そうですね。ネンチケの発券数から着券率(チケットを購入した人の中で、実際に試合に来場する人の割合)も過去のデータから予想できます。そこに前売り券や当日券での来場が予想されるお客様の数を加えて、様々な計画を立てます。ネンチケは最もベースになる部分なので、底上げが進むほど試合当日のイベントから売店の仕入れ、警備の数まで、あらゆる運営計画が立てやすくなります。

今はネンチケを購入されているファン・サポーターの皆さんも、日産スタジアムの試合に来られている方は1試合平均で85%くらいなんです。ニッパツ三ツ沢の試合になると、60%まで落ち込むこともあります。

 

――ニッパツ三ツ沢は、「水曜の1930キックオフ」の試合もあるからでしょうか?

 

ネンチケ購入者は小学生も多いので、仕方のない面もあるのですが…。ネンチケの着券率は、もう少し改善できるよう取り組んで行きたいと思います。

年間20試合、全てに来場されているネンチケ購入者は、全体でも8%しかいないんです。シーズン前に「行けない試合もある」と分かっていながら、先にお金を出して買ってくださっている有難いファン・サポーターなので、僕個人としてもネンチケ購入者を最優先で、色々な施策を考えたいと思っています。


■ネンチケ購入は、ぜひ年内に!

――Q3.ネンチケは年が明けて補強や新シーズンへの動向を見てから購入を決断するよりも、できるだけ年内に買った方がクラブは有難いですか?

 

そうですね。来季に向けたクラブ全体の予算計画もありますし、主催試合のない12月にまとまった現金収入があることもクラブには助かります。あとやはり、来季はネンチケも含めチケット価格を改定(値上げ)しましたので、それを理由に「ネンチケは買い控える」とおっしゃる方がどれくらいいるのか、少し不安もあります。年内にネンチケを購入いただき、「2014年もF・マリノスを支えるよ、たくさん試合に行くよ」と表明していただける方が多いほどクラブは有難いですし、心強く思います。

さらに来季、ACLに出場することになれば開幕も早まりますし(※例年通りなら2月中旬に開幕)、万が一のネンチケ発送トラブルなど無用な混乱を避けるためにも、ぜひ早めの購入をお願いします。

[後編に続く]


manabu-nenchike2014 年間チケットのお申し込みの詳細は横浜 F マリノスホームページをご覧ください。

横浜 F マリノス 2014 年間チケット ホームページ