vol.111 2014年 ACL

2014/08/9  VS  柏レイソル

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vol.110 『跳ね人』インタビュー

2014/04/12  VS  ベガルタ仙台

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vol.109 ブーイングは応援に含まれるのか?

2014/03/29  VS  鹿島アントラーズ

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vol.108 2014年を横浜の年にするために

2014/03/02  VS  大宮アルディージャ

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ネンチケのススメ!! 永島誠チケットセールスグループ部長 インタビュー(後編)

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hamatra paper vol.106(11/10 名古屋グランパス戦で配布)に掲載した、特集「ネンチケのススメ 」。

本特集でインタビューさせていただいた、横浜マリノス・第一事業部チケットセールスグループ部長の永島誠さんとクラブに許可を頂き、インタビューの全文を hamatra.comで公開します。

前編はこちら

(インタビュー:蒼井真理)


◆プロフィール

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永島誠(ながしままこと)

19661016日生まれ、鹿児島県出身。横浜国立大を卒業後、「ぴあ株式会社」に入社。チケット販売やイベント企画・プロモーションのノウハウを学ぶ。2004年、横浜マリノス株式会社に入社。現在は第一事業部チケットセールスグループ部長として、広告宣伝やチケット販売業務の責任者を務める。

 


■来季2014年から、チケットを値上げする理由

――Q4.F・マリノスのオフィシャルサイトで嘉悦社長からも説明がありましたが、改めて来季のネンチケ・一般チケットの値上げを決定した理由を教えてください。

2014年シーズンのチケット価格・料金改定について
http://www.f-marinos.com/news/detail/2013-09-27/130000/125702

 

消費税の引き上げが事前に予想されていた事もありますが、チケットの単価については3年くらい前から調査を続けており、実際に値上げをする方向で固まったのが今年の3月くらいです。他クラブと比較すると、チケットの「購入平均単価」に大きな差がありました。オフィシャルサイトで嘉悦は「最も高いクラブと約1000円もの開きがある」と書きましたが、本当はもっと差があります。仮にその差をそのまま埋められれば4億円以上の増収となり、昨季の単年赤字(62900万円)も、その多くが解消できます。

ここを誤解していただきたくないのですが、「F・マリノスの自由席は他クラブに比べ安いから値上げしよう」ではなく、購入いただいた全席種チケットの「購入平均単価」が他クラブと比べ低いのです。つまり、単価の高い指定席が売れていない。

その理由を考えると、日産スタジアムは国内最大のキャパシティを誇る巨大なスタジアムで、「自由席」でバックスタンドも含めた多用なエリアから観戦することができる。さらに現状では来場が遅くなっても、指定席を買っておかないと席が見つからないという心配もほとんどない。そのために、かなり多くのお客様が最も価格の低い「自由席」を購入されています。

ですから当然、席割りも含めた改定案も検討しましたが、席割り(現在の自由席の一部を、指定席やゾーン指定席に変更する)は「次のステップ」だと考えました。まずはチケット全体の単価を見直した上で、ファン・サポーターの反応を踏まえ、状況を見ないと、皆さんの需要・要求からズレた席割りになってしまう可能性もある。チケット単価の見直し・価格改定と同時に席割り変更も行うとファン・サポーターの混乱も大きくなるので、席割りの改定は来年・再来年以降の課題と捉えています。

たとえばバックスタンドを全て指定席にしたとして、購入される方が少なくて空席が増えると選手がピッチに出てきた瞬間に失望するでしょうし、テレビ中継などの見栄えの問題もあります。その一方で、ゴール裏の自由席ばかり人が増えて席取りが過熱したりするのも問題です。

現在は「自由席」を選択した方が、かなり優遇された席割りになっています。ネンチケ購入者の70%は自由席ですし、大切にしなければいけない。なので、現在「自由席」を購入されて様々なエリアで観戦されている多くの皆さんから、できるだけ不満がでないような席割りを考えていかなければならないと思っています。


■チケットの購入平均単価を上げるために

――日産スタジアムのスタンドの構造と、席割りの上で、例えば横からの視点・俯瞰で試合を観たい人にとっても、自由席を買ってバックスタンド2階から観るのと、SS席やSA席を買ってメインスタンドから観るのと、試合の観やすさにほとんど違いがないのも大きな問題だと思うのですが。現状ではファン・サポーターにとって指定席を購入するのは、「クラブにより多くのお金を落として貢献している」という自己満足、ロイヤリティを示す行為でしかないのかな、と。

 

ただ今年、2013シーズンはSS席のホーム側が完売になる試合が増えているんです。その理由は、初めてスタジアムに観戦にくるお客様が増えているから。「指定席の方が試合がよく見える」とか、「自由席を確保するために列に並んだり早く来場するより、ゆったりしたい」と考える人が多いようです。

顕著なのが9月のセレッソ大阪戦で、柿谷選手が目当ての、これまでスタジアムに足を運ばなかったような人が大挙してメインスタンドを埋めてくださいました。先日の広島戦もそうだし、SS席の購入が増えたということは、新規のお客様の取り込みも進んでいるのかなと思います。実際、今季はチケットの購入平均単価が昨季に比べて、150円ほどアップしています。150円違うと、それだけで、入場者は同じだったとしても年間の売上は8,000万円も違ってくるんです。

そうやって新規のお客様をメインスタンドに呼び込みつつ、既存のファン・サポーターにも満足いただける席割り改定を行うことで、F・マリノスにとって大きな課題である「購入平均単価の向上」も少しずつ達成できるのかなと思っています。


■入場者数を増やすため、ファン・サポーターにできること

――Q5.F・マリノスの入場者数・ネンチケ購入者を増やすため、ファン・サポーターがクラブに協力できる事、あるいはクラブからの要望はありますか?

 

現状でも既に、試合当日のスタジアムで、あるいは試合のない日のスタジアム外でも、たくさんのファン・サポーターの皆さんに様々な協力をいただいており、非常に有難く思っています。

先日、リクルートのじゃらんリサーチセンターが、全国1869歳の男女、約18,000人に対し行った大規模なインターネットによるアンケート調査結果を発表しました。それによれば、「初観戦のきっかけ」は、「友だちや家族に誘われて」といった勧誘・口コミを理由と回答した割合が80%前後で、私たちが想定していた通り非常に多かったんです。

なので、現状でも様々な協力をいただいていますが、組織的な活動でなく個人レベルでも、もっと学校や職場、あるいはTwitterFacebookLINEの中で、「F・マリノスの試合に行って、楽しかったよ!」と話題にして、知人を試合に誘っていただけると、「そんなに楽しいの? じゃあ行ってみようか」という人も増えると思います。

クラブにとっては、1回以上試合に来場された方に、また来てもらえるように例えばスタジアムのホスピタリティを向上したり、試合以外でも魅力的なイベントを組んだりと様々な方策はあります。「観戦経験がゼロの人を1にする」のが最も大変で、告知にもコストがかかります。

試合観戦に来たことが無い人を呼び込むには、やはり実際にスタジアムに来ている皆さんが、観戦・応援の魅力を伝えて誘うのが最も効果的だと思います。


■スタジアムの楽しみは「観戦」だけじゃない

――リクルートの調査報告は私も読みましたが、「初観戦の満足度」は「サッカーに非常に詳しい人に誘われて」観戦したケースで高くなるという結果もでていました。事前に試合の見所や選手の特徴を伝えたり、試合中に隣で解説したり、疑問に答えてあげるのも大事な要素で、その意味でも私たちファン・サポーターは「勧誘者」として適任なんだな、と。

 

そうですね。さらに加えて、試合前のイベントやスタジアムグルメについても予め告知して頂けると、「それもあるんだったら行こうかな」と思う方や、「早めにスタジアムに行こうか」という方も増えると思います。私たちの考え方としては、キックオフぎりぎりに来て「試合だけ観て帰る」お客様をなるべく減らしたいんです。

 

――当然、ホームゲームにも盛り上がりに欠けたスコアレスドローの試合もあれば、F・マリノスが負ける試合もある訳で…。

 

それだけでスタジアム観戦の印象が悪くなると、次に「また来たい」と思っていただけず、リピート率も上がりません。なので、キックオフ3時間前からトリコロールランドを開催していて、毎回違ったイベントやグルメ企画を開催していること、試合だけでなく小さなお子様も含めファミリーで楽しめる場所であることを知って、体験して帰ってほしいんです。

 

――確かに、観戦・応援歴の長いファン・サポーターほど「試合と応援が全て」で、そういったライト層の目線から誘ったり、伝えることを忘れがちかもしれません。まずは次の試合どんなイベントが予定されているか調べるところから始めないとダメですね(笑)。

 

そうすれば、「試合は負けちゃったけど、楽しかったね」と感じてくれる初観戦のお客様も増えると思います。そういった試合だけでない付加価値の情報も、勧誘の際に伝えてほしいですね。


■大切なのは「参加して楽しかった」記憶

profile3――あとサポーター目線で言えば、試合中はただ座って大人しく観てるだけじゃなくて、少しでも応援に参加してほしいですね。「参加した」感が得られれば、初観戦でもただ「負けちゃったね」じゃなくて「悔しい、今度は勝つところが見たい」と感じる人も出てくるんじゃないでしょうか。そう思って、歌詞カードを掲載した「バモバモコミック」も配布しているのですが。

 

そうですね。先日の広島戦でもゴール裏のサポーターが主導して小旗をゴール裏の自由席に置いて、大がかりなコレオを実施していただきました。あれも初観戦者の、「参加した」感につながると思います。コールリーダーのひろあき君から追加のお願いがあったので、また新たに15,000本の旗をクラブで購入します。ぜひ上手く活用してほしいです(笑)。でもそれによって単純に、15,000人も応援に「参加する」人が増える訳ですからね。

 

――小さな子供は、試合中もピッチそっちのけで小旗を振っていたりしますが(笑)、それが「スタジアムに来て楽しかった」という記憶につながれば良いわけで。

 

今シーズンから、試合前に「民衆の歌」を歌おうという試みも行っていますが、来季はもっとスタンドの全員が歌えるようにするための仕掛けも考えています。

 

――歌詞がオーロラビジョンでなく、ピッチレベルのLEDにしか掲示されないため、「分かりにくい。だから歌えない人が多い」と言う声もありますが?

 

いろいろクリアしなければならない関係各所の問題、ということもありますが、演出的に考えてもオーロラビジョンに歌詞を出すのが良いのか? という考えも正直あります。あの映像は1つの作品として考えてもいますので。F・マリノスの歴史の重みを感じさせる美しい映像に、歌詞を重ねるのは…。なんかよそのクラブっぽいというか(笑)。

 

――ああ…。確かにあの映像は素晴らしいですし、歌詞が前面に出ると川崎フロンターレとかFC東京っぽいというか、無粋な感じになるかもしれませんね。

 

そこはファン・サポーターの皆さんの意見も聞きたいのですが、僕や演出チームの個人的な意見としては、あの映像には歌詞を重ねたくないなあという気持ちはあります。

 

――ハマトラ紙や、バモバモコミックに「民衆の歌」の歌詞を掲載するのは大丈夫なんでしょうか?

 

おそらく大丈夫だとは思いますが、確認しておきます。


■「招待券は大っ嫌いです!」

――永島さんから、「これだけは言っておきたい、伝えたい」というものは何かありますか?

 

お客様が増えると、「招待券をバラ撒いているからだ」という方が必ずいらっしゃいますが、私は招待券は大っ嫌いです。チケットは売ってナンボで、F・マリノスの試合に価値を感じてお金を払って来場いただくことに意味があるんです。「招待券をバラ撒くのは大っ嫌いだ」と永島が言っていたと、ちゃんと書いておいてください(笑)。学校単位の観戦会もちゃんと買っていただいていますから。団体観戦なので多少は割り引いていますが。

それと、日産自動車の販売店でお客様にお渡ししている招待券も、買っていただいているんです。受け取った人はタダかもしれませんが、F・マリノスは「販売して」いるんです。無料で受け取られる方にしても、自動車を買ったりした際など、何らかの対価として受け取っていますから、決して「無償提供」とは思っていません。現在はスポンサー様に契約の一部として決まった枚数の招待券をお渡しするなど、必要最低限の枚数しか「招待券」は出していません。


■少しずつ芽を出す、地道なホームタウン活動の効果

――優勝争いも佳境に入る中で、中村俊輔選手の姿と『この街に、頂点を。』の文字が入った「のぼり」がホームタウン各所に2,000本設置されるようになりました。地元の商店街など、最近のホームタウンにおける活動の手応えは、どんなものでしょうか?

 

色々なところで、F・マリノスに協力していただける機会が増えています。今までだったら、横浜市内の小中学校が入口の付近にF・マリノスの「のぼり」計500本を設置してもらうなんて事は有り得ませんでしたし、市内のスポーツセンターや港北区や都筑区の商店街も「のぼり」の設置に手を挙げていただきました。

これこそ、正に地道なホームタウン活動の成果だと思います。地に足をつけた活動を継続してやろうと、「ホームタウン推進本部」という専従の部署を作って本腰を入れ始めたのが2006年頃です。6、7年経った今、ようやく撒いた種が芽を出し始めている。ホームタウン活動は、本当に時間がかかるものなのです。

例えば地元商店街へのアプローチにしても、最初から「チケット買ってください」「試合を観に来てください」って言うと、「ああ、それが目的なのか」と思われてしまう。夏祭りなどのイベントに協力したり地道なお付き合いを続ける中で、商店街の方から「F・マリノスの試合観戦会を開きたいんだけど、チケットを手配してもらえるかな?」と言っていただけるようなケースが、この1、2年はとても増えています。


■ネンチケホルダーは、最も重要なパートナー

――クラブにとって「年間チケットホルダー」とは、どのような存在でしょうか?

 

ネンチケを購入いただいているファン・サポーターの皆さんは、クラブにとって最も重要なパートナーと捉えています。先程も言いましたが、必ずしも全試合に来られないと分かっていても購入してくださる方が大勢いらっしゃいますし、青森県や北海道に在住で購入されている方もいらっしゃいます。

 

――では今後、たとえば席割りの変更など改定を行うとしても、できるだけ多くのネンチケホルダーの意見を汲み取りたい、と?

 

そのためにアンケートも実施して、色んな声を既にいただいています。ある人は「良い」というものでも、別の人は「悪い。改善してくれ」という意見も多々あります。ネンチケ購入者の全員が満足されるような回答・改定はできないかもしれませんが、できるだけ多くのファン・サポーターの方に喜んで満足いただけるように、可能な限り年間チケットホルダーの皆さんの声を反映できるように工夫したいと考えています。


■適切な距離感を保ちつつ、目標は同じ

――最後に、ファン・サポーターへのメッセージをお願いします。

 

日産スタジアムの空席を埋める、ご来場者数を増やすための活動はクラブだけがシャカリキに行っても、なかなか効果が出るものではありません。試合で選手たちと皆さんが共に勝利を目指すのと同じで、ファン・サポーターの皆さんと一体となって行う中で成果が表れるものです。

今後も、F・マリノスに対する様々なサポート活動を継続していただきたいですし、クラブも皆さんと話し合い、皆さんが活動しやすい環境を提供していきたいと考えています。今はクラブの私たちと、ファン・サポーターの皆さんが目指す「F・マリノスの目的地」は、おそらく大きくズレていないと思いますので、しっかり共有しながら一緒にクラブ、チームや選手たちを支えていってほしいですね。

 

――永島さんが2004年にF・マリノスに入られてから、クラブとファン・サポーターの距離感や関係性は変わったと思われますか?

 

当時はファン・サポーターの中でも、クラブやチームを支えるための考え方に対立があったり、まとまり切れていない部分もあったと思います。でも今は目指す方向性がひとつになってきていると感じますし、色々なグループや個人が一緒になって一緒にクラブとチームを支える活動をされていると思います。

ファン・サポーターの皆さんとクラブは、かなり意識を共有できるようになりましたが、かと言って土足で互いの領域に踏み入れるようなこともない。現在は適度な距離感を保ちながら、協力し合えているのではないでしょうか。他クラブの様子を見ても、あまりファン・サポーターとクラブが「ベッタリ」な関係になるのも良くないと思いますから。

 

――そこはF・マリノスらしい、あるいは横浜らしい一線の引き方、距離感とも言えるかもしれませんね。

 

それはあると思います。横浜の人、あるいはF・マリノスのファン・サポーターの皆さんには「過度な馴れ合いを求めない」気質があるのではないでしょうか。自主的に考えて活動することに価値を感じており、あまり互いに干渉・介入し過ぎない。だからと言って、目標や価値観を分かち合えていない訳でもない。ファン・サポーターの皆さんとクラブは、良好な距離を保つ中で互いに協力することができていると感じています。


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 2014 年間チケットのお申し込みの詳細は横浜 F マリノスホームページをご覧ください。

横浜 F マリノス 2014 年間チケット ホームページ

 

 


ネンチケのススメ!! 永島誠チケットセールスグループ部長 インタビュー(前編)

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hamatra paper vol.10611/10 名古屋グランパス戦で配布)に掲載した、特集「ネンチケのススメ 」。

本特集でインタビューさせていただいた、横浜マリノス・第一事業部チケットセールスグループ部長の永島誠さんとクラブに許可を頂き、インタビューの全文を hamatra.comで公開します。

(インタビュー:蒼井真理)


◆プロフィール

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永島誠(ながしままこと)

19661016日生まれ、鹿児島県出身。横浜国立大を卒業後、「ぴあ株式会社」に入社。チケット販売やイベント企画・プロモーションのノウハウを学ぶ。2004年、横浜マリノス株式会社に入社。現在は第一事業部チケットセールスグループ部長として、広告宣伝やチケット販売業務の責任者を務める。

 


F・マリノスの年間チケット販売数は少ない?

――まず、ネンチケ(年間チケット)について基礎的なところから。Q&A形式で永島さんにお答えいただく中で、クラブとファン・サポーターが情報や考え方を共有できればと思います。

 

はい。よろしくお願いします。

 

――Q1.F・マリノスの年間チケット販売数や入場者に占める年間チケットホルダーの割合は、浦和レッズや近隣の他クラブと比べて少ないのでしょうか?

少ないですね。近隣の川崎フロンターレが8,000席超、FC東京も約8,000席、浦和レッズが20,000席に近いと聞きます。

ただ同時に、前売り券や当日券を買って試合にきてくださる方の割合が多いのはF・マリノスの強みとも言えます。ネンチケ販売数は川崎やFC東京より少なくても、入場者数はF・マリノスの方が多い。固定のファン・サポーターの占める率があまりに高く、新たにスタジアムに来てくださるお客様が少なくなると、将来的には観客数が先細りになってしまうリスクもありますから。

クラブとしては、「三ツ沢の自由席はネンチケでなければ入れない」10,000席が適正販売数かなと考えています。平均入場者に占めるネンチケ率は、35%を当面の目標にしています。

F・マリノスの強みは、優勝争いに絡めていない中でもネンチケ販売数を伸ばしていることです。法人向けの販売数は厳しい景気動向もあって、2000年からずっと右肩下がりですが、個人向けのネンチケ販売数は確実に伸びており、席数では個人向けが全体の95%を占めています。

現在のネンチケ販売数は、タイトル獲得や人気選手の加入といった「特需」に頼らずに伸ばしてきた数字なので、これから大きく伸びることはあっても急激に落ち込むことはない。今後もクラブを支えるベースとなる数字であると、自信をもっています。


■「過去最多」を更新し続けているネンチケ販売数

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――資料を読んで、特に昨季・今季と2シーズン続けて、予想以上に良い数字の伸び方をしており、少し驚きました。

 

ゴール裏の応援も含めて、スタジアムの雰囲気も良くなっていますし、そこで観戦・応援の喜びを知った人が新たな人を連れてくる、良い循環も生まれていると思います。

 

これが毎年優勝争いして、タイトルを獲っているクラブだったら不思議でもなんでもないのですが(笑)。近年、順位的にはあまり芳しくない中でネンチケ販売が伸びているのは、誇れる部分かなと思っています。

今季から新設した「SC席」もネンチケで約200席ご購入いただいています。「より価格の高い指定席から流れてくるお客様がどれだけいるか?」という心配もありましたが、SB席も含め全ての指定席もネンチケ販売数は伸びています。我々が想定していた通り、やや年配の自由席ネンチケホルダーの方が「シート張りをしたり、待機列に並ばなくても、いつもの場所で観戦できる」と考えられて、SC席に移行されていますね。

 

――2011年は、前年末に松田選手ら多くの人気選手の契約非更新がありネンチケの販売数は減っていますが、この年はハーフネンチケの販売数が他のシーズンに比べても多いですね。

 

一度はF・マリノスから気持ちが離れてしまったけれど、「やっぱり試合を観に行きたい」と思ってくださった方も多かったのではないでしょうか。少しずつ、選手個人ではなくチームそのものを応援してくださるファン・サポーターが増えているように感じています。

 

――長引く不況に、2011年の開幕直後には東日本大震災もあり、近年はJリーグ全体で観客動員の苦戦が続いています。その中でも、F・マリノスのネンチケ販売数と観客動員は2シーズン連続で着実に伸びている。しかも昨季は、最後に4位になりましたが最終節までの最高順位は5位で、一度も優勝争いには絡めていません。…これは結構すごい事だと思うのですが。

 

昨シーズンは序盤につまずきましたが、樋口監督と選手たちが我慢して、ブレずにスタイル構築に取り組んだ結果、「内容的におもしろいサッカーになってきている」と感じられたファン・サポーターが多かったのではないでしょうか? 「おもしろいサッカーをして勝っていけば、お客様も増えるし、ネンチケを買いたいと思われる方も増える」のだなと強く感じています。

前所属クラブで主将を務めたこともある、富澤選手や中町選手などピッチの外でも発信力の強い選手が加入したのも大きいですね。対外的な告知、PR面で彼らの力を借りているところは正直かなりあります。富澤選手は、スタジアムDJの光邦さんのラジオ番組でほとんどレギュラーみたいになっていますし(笑)。


■ネンチケ10,000席を目指しての取り組み

――当面の目標である「ネンチケ10,000席」を達成するため、今後はどのような取り組みを考えていますか?

 

過去数シーズン、あらゆる方面で地道な取り組みを継続してきたからこその増加傾向だと思うので、これは続けていきます。その中でも、「小学生のネンチケ販売数」は伸びてはいるのですが、私たちが思っている程ではない。価格も1試合あたり200円と低く抑えているし、もっと増やしたいと考えています。

小学生のネンチケ販売数が伸びれば、必然的に親御さんも同伴するために前売り券・当日券を購入いただいたり、あるいは翌シーズン以降にネンチケの購入を検討してくださるかもしれない。そうやって「大人の自由席率」も伸ばす中で、最終的には「ニッパツ三ツ沢の自由席は、ネンチケ購入者にしか座れない」というレベルまで行ければいいなと考えています。

あとは、第三の指定席であるSC席が初年度から好調な販売数を記録しましたが、F・マリノスは他のクラブに比べても金額の高い指定席があまり売れていません。高額な指定席を買ってくださるファン・サポーターに対して、もっと付加価値を感じていただけるようなサービスを行いたいと考えています。

2014シーズンは、最高ランクSSS席のネンチケを購入いただいた方にのみお渡しする英国製ニットスカーフを製作しようと思っています。プレミアリーグには同様のサービスを行っているクラブも多いようです。やはり、「特別感・プレミアム」は必要かなと考えています。


前売り券や当日券を買ったほうがクラブは助かる?

――Q2.割引率の高いお得なネンチケより、前売り券や当日券を買って観戦した方がクラブは助かるんじゃないの? …と考えるファン・サポーターは未だに少なくないようですが。

 

収益だけを考えれば、20試合を全て当日券で観戦いただく方が助かります(笑)。でもクラブはチケット収入の増加だけを目的にしている訳ではありません。シーズン開幕前に年間のスケジュールが出た段階で、「F・マリノスの試合には全て行くものだ」という前提で、スケジュール帳に試合日程を書き込んでくださる熱心なファン・サポーターを増やしたいのです。

F・マリノスは他クラブと比べても当日券を買って来場いただくお客様の割合が高い。そうすると例えば、雨が降ったら入場者数が予想を大きく下回ってしまうこともあります。ネンチケを持っていると、多少の雨であったりチームが不調な時期でも、「試合に行かなきゃいけない」という気持ちにさせるのではないかと思います。

 

――ファンとしては当然、「先にお金を払っているのだから元を取りたい」という考えもありますね。

 

そういう効果はあると思います。ただ、ネンチケが100%になるとクラブのチケット収入も落ちてしまうので、35%ぐらいが適正な数値なのかなと考えています。


■ネンチケは年間計画のベースにもなる

――以前、永島さんにインタビューさせていただいた際も、「入場者に占めるネンチケ率が上がると年間のスケジュールが立てやすい」という話がありました。

 

そうですね。ネンチケの発券数から着券率(チケットを購入した人の中で、実際に試合に来場する人の割合)も過去のデータから予想できます。そこに前売り券や当日券での来場が予想されるお客様の数を加えて、様々な計画を立てます。ネンチケは最もベースになる部分なので、底上げが進むほど試合当日のイベントから売店の仕入れ、警備の数まで、あらゆる運営計画が立てやすくなります。

今はネンチケを購入されているファン・サポーターの皆さんも、日産スタジアムの試合に来られている方は1試合平均で85%くらいなんです。ニッパツ三ツ沢の試合になると、60%まで落ち込むこともあります。

 

――ニッパツ三ツ沢は、「水曜の1930キックオフ」の試合もあるからでしょうか?

 

ネンチケ購入者は小学生も多いので、仕方のない面もあるのですが…。ネンチケの着券率は、もう少し改善できるよう取り組んで行きたいと思います。

年間20試合、全てに来場されているネンチケ購入者は、全体でも8%しかいないんです。シーズン前に「行けない試合もある」と分かっていながら、先にお金を出して買ってくださっている有難いファン・サポーターなので、僕個人としてもネンチケ購入者を最優先で、色々な施策を考えたいと思っています。


■ネンチケ購入は、ぜひ年内に!

――Q3.ネンチケは年が明けて補強や新シーズンへの動向を見てから購入を決断するよりも、できるだけ年内に買った方がクラブは有難いですか?

 

そうですね。来季に向けたクラブ全体の予算計画もありますし、主催試合のない12月にまとまった現金収入があることもクラブには助かります。あとやはり、来季はネンチケも含めチケット価格を改定(値上げ)しましたので、それを理由に「ネンチケは買い控える」とおっしゃる方がどれくらいいるのか、少し不安もあります。年内にネンチケを購入いただき、「2014年もF・マリノスを支えるよ、たくさん試合に行くよ」と表明していただける方が多いほどクラブは有難いですし、心強く思います。

さらに来季、ACLに出場することになれば開幕も早まりますし(※例年通りなら2月中旬に開幕)、万が一のネンチケ発送トラブルなど無用な混乱を避けるためにも、ぜひ早めの購入をお願いします。

[後編に続く]


manabu-nenchike2014 年間チケットのお申し込みの詳細は横浜 F マリノスホームページをご覧ください。

横浜 F マリノス 2014 年間チケット ホームページ

 

 


vol.106 特集「年間チケットホルダー」へのはじめの一歩!/ネンチケのススメ

2013/11/10  VS  名古屋グランパス

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特集 

「年間チケットホルダー」へのはじめの一歩!/ネンチケのススメ

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ブラインドサッカー日本代表落合啓士選手 インタビュー

hamatra paper vol.105(10/19 サンフレッチェ広島戦 )に掲載しました、特集「視覚障がい者にとってのスタジアム 〜音で空気で感じるサッカー〜 」。

本特集でインタビューさせていただいたブラインドサッカー日本代表、落合啓士選手ご本人に許可を頂き、インタビューの全文を hamatra.comで公開することとなりました。

hamatra paper vol.105特別編として、印刷紙面には載せきれなかったインタビューの全文をお届けします   (聞き手 P-TANG/みずき)。

◯プロフィール

落合啓士(おちあいひろし)

1977年8月2日に横浜で生まれる。10歳の頃から徐々に視力が落ちる難病を発症し、18歳で視覚障害者となる。26歳でブラインドサッカーに出会い、その後日本代表に選出。大阪、東京での生活を経て2012年より横浜へ。生まれ育った横浜の街をサッカーで良くしたいという思いのもと精力的に活動中。


見えなくても、テレビより生観戦が良い

P-TANG:落合選手のプロフィールを教えてください。

落合選手:横浜生まれ横浜育ちで、10歳の頃から徐々に視力と視野がなくなっていく難病を発症して、18歳で視覚障害者として生きていくことになりました。そのあとマッサージの資格を取って、2003年(26歳)にブラインドサッカーと出会い、ブラインドサッカー日本代表に選ばれました。2010年から横浜の「buen cambio yokohama」っていうチームでプレーしてます。「ブエンカンビオ」はスペイン語で「良い変化」という意味なんです。サッカーと出会うことで、色んなものが良い方向に変化してもらいたいという思いでつけました。

以前は関西の方がブラインドサッカーが盛んだったので、2004年に引っ越して、2008年の夏まで大阪でプレーしていました。でも2007年くらいに関東のブラインドサッカー熱が関西よりも高まったので、今度は東京に引っ越しました。財政難の横浜市よりも、障がい者に対する行政のサービスが良かったので東京都に住んでいたのですが、「サッカーで横浜の街を良くしたい」と思い、今年の8月に生まれ育った横浜に帰ってきました。

P-TANG:横浜F・マリノスはいつごろから応援しているんですか?

落合選手:Jリーグ開幕当初からです。でも実際にF・マリノスの試合に行ったのは、恥ずかしながら今年が初めてなんです。それまでは自分自身もスタジアムに行く勇気が持てなくて、テレビで観戦したりしていました。テレビ放送が少なくなってきた時期は、結果だけチェックする感じでしたね。

2年前から日本代表の試合を、スタジアムで応援するようになりました。代表のゴール裏でサポーターの方と仲良くなって、「一緒に行こうよ」と誘われるようになって。行ってみたら、ゴール裏はとても楽しい場所でした。代表の試合によく行くようになってから、友だちと「横浜をもっと良くしたいね」って話をしていて。「横浜」についてインターネットで検索したら、「NPOハマトラ」が出てきたんです。「横浜の街をフットボールで良くする」って書いてあって、これはリンクしなきゃと思いました。それで代表のサポーターの方に、ハマトラの代表の方を紹介してもらって。本当に人の縁でF・マリノスの試合に行くようになりました。

やっぱり生観戦はいいですよね! 僕にはピッチの様子は見えないし、テレビ中継みたいな解説はないけれど、ゴールを決めた時の感動とか。みんなでハイタッチするような空気感や、負けた時の悔しさもスタジアムのほうがテレビ観戦より何倍も大きい。スタジアムでの観戦は、みんなと一喜一憂できるのが面白いなと思います。


スタジアムでの応援スタイル

P-TANG:試合の楽しみ方は?

落合選手:日産スタジアムへは友だちと行くことが多いです。隣でピッチの様子を解説してもらって、試合を頭の中にイメージしながら観ます。1人で行く時は、ゴール裏に入る場合は、できるだけ応援をします。もちろんピッチでどんなプレーが起きているかは全然わかりませんが、応援をすることで「試合に参加している」楽しさを味わっています。応援が、辛い時に選手の背中を押してくれているという事は自分もプレーヤーの立場で実感しているので、ゴール裏に行く時はできるだけ大きな声で応援しています。

iPhoneを使って、スカパーオンデマンドの中継音声を聞きながら観戦する事もあります。タイムラグがあるので、実際の試合より1分くらい遅れた実況・解説になりますけど(笑)。やっぱり、ゴール裏で応援するのが一番楽しいですね。


クラブとサポーターにできること

P-TANG:視覚障害の人に、もっとスタジアムに足を運んでもらうために、クラブとサポーターにできることはありますか?

落合選手:たとえば磐田や仙台、川崎、セレッソ大阪などは、インターネットラジオなどを使ってホームゲームを実況中継してるんです。仙台や川崎はスタジアムでラジオの貸出もしています。これは隣でピッチの様子を解説してもらわないと試合の様子が分からない視覚障害には大変ありがたいサービスで、「なぜ日産スタジアムではできないのかな?」って思います。まだ三ツ沢ならピッチが近いので、ボールの蹴る音が聞こえたり選手同士の声が聞こえたりして楽しめる。でも、日産スタジアムはスタンドからピッチが遠く、音も聞こえないってなると、何をしているのか全くわからない。

私の場合は自分のプレー経験から、例えば笛の吹き方で「今の結構なファウルだな」とか「あぁ、やり直しなのかな」ってイメージしたりできます。でもサッカーがわからない人が来た時に「音だけで楽しむ」となったら、ラジオ実況みたいなものは必要なので、ぜひF・マリノスにもやってほしいと思います。


ある日のスタジアムでの出来事

P-TANG:F・マリノスには「車いすチケット」という車椅子の方と介添人に対する割引補助はありますが…。

落合選手:そうですね。視覚障害者には無いですね。でも、別にそこは視覚障害だからって割引しなくても、他のファンと同じくらい試合を楽しめて、行った価値があればそれでいいと思いますよ。

3月にマリノスの試合に行った時に、嬉しかった事と、残念に思った事がありました。嬉しかったのは、チケット売り場を探してたら、マリノスファン歴の長そうな60過ぎのおっちゃんが「チケット買うの?」って声をかけてくれて、「じゃあこっち」って売り場までアテンドしてくれたんです。チケットを買った後も、スタジアムスタッフの人に「この人目悪いから、お兄ちゃんちょっとサポートしてあげて」と言ってくれて。すごく嬉しかったです。視覚障害者を見つけた時にパッと「サポートしよう」となってくれた。もっと色んな人にも浸透していけばいいなと思います。

残念だったのは、自由席のチケットを買ったんですが、アテンドしてくれたスタジアムスタッフの方が僕を車椅子席に案内して、そこにわざわざパイプ椅子を出してくれたんですね。僕は車椅子席で見る必要はないのに「障害者」として、ひとくくりにされてしまった。確かにそのほうが安全かもしれないけど、僕はゴール裏の応援のところに行きたいのに、車椅子席は端のほうだったのでちょっと残念だったなって。ここは少し改善の余地があると思います。

みずき:その試合は結局、その場所で見たんですか?

落合選手:そうですね。わざわざ係の人をずっと付けてくれて。「何かあったら後ろにいますので」と言われて。僕は「いや、大丈夫ですよ」とは言ったんですけど、「でも後ろにいます」と。「じゃあ、ここで観るか」ってなりましたね。

P-TANG:それもやっぱり、理解が足りないから…

落合選手:そうですね。もちろんスタッフの方も、良かれと思ってしてくれた訳で。だから僕も「いや、応援のところに行きたいんだよ」とはあえて言いませんでした。そこの相互理解がもっと進めばいいなと思います。障害者にも色んな人がいるので、まずは「その人が何を求めているか」を聞くことが大事だと思います。例えばスタジアムに入ってきた人に「今日はどこで観戦したいですか」とか。観戦に訪れたファンと、スタジアムスタッフがもっと気軽にコミュニケーションをとれるといいなと思います。


1人でスタジアムを動き回るのは大変…

みずき:試合当日のスタジアムの中は人が多くて、歩く時は大変じゃないですか?

落合選手:大変と言えば大変ですけど、逆に人がいっぱいいる事で、足音が聞こえて、階段の場所がわかったりもします。声をかけて助けてくれる方にも、人が多いほど出会える確率が上がるのでそれはそれでありがたいなと。

みずき:ゆいちゃん(注:hamatra paper vol.105参照)とスタジアムでよく会うんですけど、スタジアムの中でたまに迷子になっちゃって、一緒に応援している仲間に電話して迎えに来てもらってるみたいなんです。1人で来た視覚障害者にも、そういうサポートができたらだいぶ違うのかなと思います。

落合選手:確かにそうですね。1人でスタジアム内を歩いて自分の席に戻るのは、結構大変です。

みずき:困ったときに電話をかけられるシステムとかあれば、視覚障害者の方もスタジアムでずいぶん楽になるんじゃないかと思います。

落合選手:それいいですね、ヘルプセンターとか。でも人に聞く勇気がある視覚障害者だったらいいんですが、まだ聞けない視覚障害者も結構いるので。シャイな人は「ここは何番ゲートですか?」と聞くのも難しいかもしれません。でも、そういう人でもスタジアムにサッカー観戦に来ると、何か変わるキッカケがあるんじゃないかと思うんです。


欧州とのブラインドサッカー環境の違い

落合選手:2010年から大口の盲学校を拠点にブラインドサッカーのチーム作って、ほぼ毎週日曜日の午後はそこで練習しています。関東で8月末から12月末までリーグ戦が、3月と6月にはカップ戦があるので試合も頻繁にやってます。日本代表にも参加していて、来年の秋には日本で世界選手権が開催されます。

P-TANG:練習は週に何回くらいですか?

落合選手:チームでは週に1回ですけど、個人練習で週に3日くらいはボールを触って練習してます。あとは新横浜のラポールでトレーニングしたり。

P-TANG:以前、イギリスの映画を観た時に、日常の何気ないワンシーンで健常者の主人公がブラインドサッカーに興じてるシーンがあったんです。海外だともっと気軽に、ブラインドサッカーに参加できるのかなと思ったのですが。

落合選手:そうなんですよ。ヨーロッパは本当に凄いです、特にイギリスは。ヨーロッパだと、ブラインドサッカーも基本FIFAの傘下に入っていて、代表のユニフォームも同じデザインだったり。イギリスでは遠征費や活動資金もFAが出すので、栄養士やマッサージ師も付いて遠征に来るんです。でも日本のブラインドサッカー代表はJFAの傘下にないんですね。だから僕らは、基本的に遠征費は自腹です。

JFAは文科省、障害者スポーツは厚労省の管轄なので、なかなか難しくて。でも、来年その2つが「文科省」に一本化されるかもしれないという新聞記事があったので、それが本当であれば障害者スポーツ、ブラインドサッカー代表の環境も変わり始めるかもしれません。


人と人の関わりが、取り巻く環境を良くする

落合選手:10月26日の土曜日に、日吉の慶応大学のフットサルコートで、ブラインドサッカーのリーグ戦があります。「慶応フットサルアドベンチャー」で検索すれば出てきます。

P-TANG:これは、誰が行ってもいいんですか?

落合選手:はい。ブラインドサッカーの体験もできます。試合観戦は無料で、しかも僕のチームのホームゲームです。ブラインドサッカーは何も見えないので接触プレーが激しくて、見ていて興奮すると思いますよ。みなさんに観に来てもらって、色んな広がりができて、視覚障害者もF・マリノスのサポーターと知り合えれば、「じゃあF・マリノスの試合に行こうかな」とか…。単純ですけど、そういうのって大事だと思うんですよね。「あの人たちに会いに行こう」みたいな。

P-TANG:スタジアムのホスピタリティ整備が足りてないせいで、観戦に足が遠のいている人もいるのかな、と思うのですが。

落合選手:これは漠然としたイメージなんですけど、日産スタジアムは大きい分、一体感を生み出すのは難しいですね。ゴール裏の中心とその周辺だけが盛り上がっていて、まわりはちょっと手を叩いたりしているんだけど、音が拡散してしまってるとか。ホスピタリティとは違うことだけど、もっと上手くできないかなって思います。

P-TANG:それは、僕たちサポーターも考えないといけない事ですね。

落合選手:周りを見て、はじの方で恥ずかしそうに手を叩いてる人がいたら、その人をどう巻き込むかですよ。歌詞が分からないんだったら「一緒に歌おうよ」と教えてあげるとか。

スタジアムのホスピタリティやサービスって、極論なんですけど、満足度を上げるのは「人と人」だと思います。インフラ整備で段差をなくすとか、ラジオ実況も大事ですけど、それがなくても隣で実況してくれる友だちを作ればいいわけで。人と人が仲良くなれば、クラブが用意するホスピタリティやサービスって、そんなに必要ないなって感じなんですよ。ファン・サポーターが障害者を受け入れる、それまでの過程が難しいですけど、その過程をどう作っていくかですよね。例えばお互いのイベントに足を運んでもらう上手いやり方を作ったり、そこで仲良くなる方法を考えたり。


日常生活でも、どんどん声をかけて

落合選手:いつもは内気な人たちが、スタジアムにサッカー観戦に来ればハジけると思うんです。視力が悪くなって視覚障害者として生きていくと決断する時、やっぱりネガティブになるんですね。それは誰しもあると思います。ネガティブをポジティブに変えられるキッカケが、僕の場合サッカーだったんで、やっぱり「サッカーで色んなものを良くしたい」って思います。

P-TANG:僕らもスタジアムで障害者の方への理解が深まったら、実生活でもそれを役立てられるんじゃないかと思うんですよね。

落合選手:そうですよね。街中とか駅でも普通に接する事ができたり。そうしたら横浜の街が、どんどん良くなっている。

P-TANG:なかなか障害者の方に、気軽に声をかけられないっていうのは皆あると思うんですよ。「本当に声かけていいのかな?」って。

落合選手:勇気を出して「大丈夫ですか」って声をかけた時に、断られてしまいショックだったという話も聞いたことがあります。自分の行為を拒絶されたと思うとガッカリですが、ちょっと捉え方を変えて、「断るという事は、その障害者に自分でなんとかする能力があるんだな」と思ってほしいです。そういう温かい目で見てもらえば、断られてもあまり嫌な気持ちにはならないのでは。ただ、声をかけてもらった方が有難いので、どんどん声かけてもらいたいなと思います。

P-TANG:ちょっとお節介なくらいがいいんでしょうか?

落合選手:大阪に住んでいた頃は、100m歩くと5人くらいに声かけられました(笑)。スーツを来て朝の通勤時間に歩いていたら「お兄ちゃん大丈夫?」って言われて「はい、大丈夫です」って答えて、また歩いてると、「お兄ちゃんどこいくの?」「会社でーす」って。もう少し歩くと今度は、「お兄ちゃん、ちょっと前に段差あるで」「はい、ありがとうございまーす」みたいな(笑)。それくらいのほうが、お節介かもしれませんけど、温かくていいです。

P-TANG:じゃあ僕らも、どんどん声をかければいいんですね。

落合選手:声をかれる時は、「何かお手伝いすることはありますか?」と言えば、能力がある人なら「私いつもここ歩いているので大丈夫です」と答えるでしょう。ちょっとでも助けてもらいたい人は本当に助かって「実はこうこうこうで…」って言うと思うので、そういう聞き方が良いと思いますよ。

P-TANG:今回の特集を読んでくれた人に、知っておいてほしい事はありますか?

落合選手:うーん、そうですね…。もしかしたら皆さんは、「視覚障害者の人、障害者はかわいそう」と思っていませんか? 必ずしも「五体満足なら幸せ」とは限らないのと一緒で、「障害がある=かわいそう」ではありません。僕たちも楽しく生きてるので、「そういう固定観念があるともったいないですよ」という事は、講演会などでもよく話します。

サッカーって、ボール1個あれば――僕らだったらカラカラ音が鳴るボールがあれば、目の見える人とも一緒にボールを蹴れるわけじゃないですか。よく「外国に行ってもボールひとつでコミュニケーションが取れる」とか言いますけど、障害の有る無し関係なく、ボール1個あれば誰とでも仲良くなれるのが「サッカー」の素晴らしいところです。そのサッカーを好きな人たちに、隔たりはないと僕は思いますよ。


 

 


vol.105 2003年、2004年、そして2013年 / 視覚障がい者にとってのスタジアム

2013/10/19  VS  サンフレッチェ広島

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特集 

「2003年、2004年、そして2013年」

視覚障がい者にとってのスタジアム~音で空気で感じるサッカー

※ ブラインドサッカー日本代表落合啓士選手インタビューは全文を公開しています。
http://hamatra.com/hamatra-paper/3622/

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2013/09/14  VS  セレッソ大阪

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